希望退職
希望退職とは??
景気悪化や経営不振にともない、生産・販売・受注量に比べ、雇用量が多くなってしまった場合、その過剰雇用を解消するため、社員に自主的な退職を呼びかけて合意退職をしてもらうことをいいます。
「従業員を解雇する」となると、当然正当な理由が必要です。正当な理由がないと、解雇自体が無効になります。また、正当な理由があったとしても、「なぜ私が辞めさせられなければならないのだ」「なぜ解雇する必要があるのだ」と従業員とトラブルになることがあります。
しかし、希望退職は「合意」して退職するわけですから正当な理由は必要なく、解雇のようなトラブルは起きません。これが希望退職の最大のメリットです。
早期退職優遇制度との比較

・退職する・しないは労働者が自由に判断します
・対象者について、年齢、勤続年数など一定の条件を付けるケースが多いです
・退職金を上乗せして支払うことが一般的です

・希望退職は、経営不振への対応策として期間を限定して集中的に行われますが、早期
退職優遇制度は、恒常的な制度として1年を通じて実施されます
・希望退職の目的は雇用調整ですが、早期退職優遇制度の主たる目的は、中高年齢者の生活設計の支援です
・希望退職は、雇用調整する人数をあらかじめ計算して募集人員を決めて行われますが、早期退職優遇制度は、対象者や利用人数などを決めないケースが一般的です
整理解雇との比較

・雇用調整のために、雇用契約を解除させ、結果として人件費の総額を減らす目的で行います

・希望退職は、本人と会社双方の合意に基づいて雇用契約を終了させますが、整理解雇は会社の一方的な意思で雇用契約を解消するため、裁判所の判例で厳格な要件(整理解雇の4要件)がついています。
・希望退職は、退職日を双方の話し合いで自由に決定できますが、整理解雇は解雇する30日前までに予告、もしくは平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません
希望退職の手順
手順1 募集基準を決定します
募集基準で決定しなければならないことは以下のとおりです。
a.退職者の募集人数は何人にしますか?
人数を決定するときは、以下のことに留意して決定します。
・どの程度過剰雇用になっているのかを計算しましょう
・退職金として資金的にどのくらい準備できるのかを考えて総額を計算しましょう
b.どの労働者を対象にしますか?
全員を対象とするのか、一定の条件を設けるのかを決めます。

希望退職を募るとき、一定の条件を設けることは何ら問題ありません。なぜなら、希望退職はあくまでも「合意退職」ですので、条件を設けたとしてもその条件に不満があるならば退職を「希望」しなければよいからです。
条件を設ける場合は、具体的な条件を検討します。
条件としては、年齢や勤続年数、役職、職種などがあります。
c.どのくらいの期間、募集しますか?
会社の経営状況に応じて定めれば問題ありませんが、一般的には1か月程度とするケースが多いです。
d.募集期間中に目標人数が達成した、あるいは、募集期間終了時に目標人数に達していない場合の対応はどうしますか?
ケースとしては次の場合が考えられます。
会社の経営状況、雇用調整の必要性の度合いを考え、あらかじめ方針を決めておく必要があります。

e.退職日はいつにしますか?
退職日について、労働者に決定させる方法や会社が一定日を指定する方法などが考えられますが、管理の都合上、会社で一定の日を決めるほうがベターといえます。ただし、その場合は「やむをえない事情がある場合はそれ以外の日の退職も認める」こととしておいた方が実務上柔軟に対応することができます。
f.退職金はどうしますか?
・支払いの基準(どのくらい上乗せされるのか)
・支払日
・支払い方法
以上の3点を決定しなくてはなりません。
特に、希望退職者にとって一番重要視していることは「退職金がいくらもらえるのか」ということ。「支払いの基準」は不公平の無いよう、きちんと基準を定めておかなければなりません。
g.退職金以外の優遇措置は設けますか?
例えば以下のような優遇措置が考えられます。
・賞与支給日に在籍していなくても、賞与対象期間の在籍日数に応じて特別支給する
・退職時に年次有給休暇の買い上げる
・社宅の退去期限を延長する
・転職活動のための勤務の免除
・再就職先のあっせんする
手順2 募集基準について、役員・経営幹部の合意を得ておきます
一部の上層部だけで決定し、社員へ通知した場合に、他の役員・幹部から反発もしくは退職者が出てしまっては、社内が混乱し、会社再建が大幅に遅れてしまいます。
そのため、募集基準を定めた後は、合意を得ておき、経営陣の意識を統一する必要があります。
手順3 社員へ通知します
手順1で決定した募集基準(募集人数、対象者、退職金の取り扱い、退職金の支払日、募集期間、申出方法、退職日、特別優遇措置の内容)を社員に通知します。
手順4 個人面談を行います
希望退職を募るためには、「希望退職に踏み切る理由、会社の状況」を社員によく理解してもらう必要があります。円滑な希望退職を進めるために、社員一人ひとりと個人面談を実施するようにしましょう。
また、希望者には退職金額を試算するなどの対応も必要です。
手順5 退職希望者名簿の作成をします
どの社員が申し出たのか、何名申し出たのかを把握するため、退職希望者を管理します。
手順6 退職希望者に諸手続きの連絡をします
一般に社員が退職するときに準じた取り扱いとなりますが、業務引継ぎに関することや、退職にあたって会社に返品するものなどについて連絡します。
また、退職後のトラブルを避けるため、以下の内容を記した「誓約書」を提出してもらうとよいでしょう。
1.競業他社に再就職しないこと
2.在職中に知りえた秘密を第三者に口外しないこと
手順7 退職金を支給します
あらかじめ定めておいた支給日、支給金額などに基づいて支給します。
手順8 退職に関する社会保険などの事務手続き、社内の諸手続きを行います
主な手続きは以下のとおりです
・離職票の作成・交付
・雇用保険被保険者資格喪失届の作成・届出
・雇用保険証書の返却
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の作成・届出
・健康保険被保険者証の受領
・厚生年金保険手帳の返却
・貸与被服の回収
・身分証明書の回収
・退職金源泉徴収票の交付
・給与の清算
・給与支払報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届の提出
・従業員名簿への退職日等の記載
手順9 募集の打ち切りを発表します
募集期間の途中で、目標人数に達した時に募集を打ち切るときは、社員に通知します。
手順10 社内組織および人員配置を見直します
人員削減に対応するため、組織の統廃合し、会社全体をスリム化します。また、必要に応じて配置転換などを行います。
手順11 必要であれば、追加募集をします
目標人数に達しなかった場合、必要であれば追加募集をします。会社の方針として、目標未達の場合に整理解雇に踏み切る、としていた場合は、整理解雇を行います。
労働組合がある場合
希望退職は、社員の生活にとっても雇用にとっても重要な影響をおよぼすため、労働組合もすぐに納得してくれるわけではありません。会社側からの説明が不十分では、労働組合の了承が得られず、希望退職が失敗に終わることも考えられます。
希望退職を行う際は、十分な議論を尽くし誠実な対応をしなければなりません。
1 労働協約の取り決めを確認します
希望退職を実施する場合はどのように取り扱うかについて、労働協約において定めているケースが多いため、その定めに従いすすめていきます。
(1)同意型…一時休業時には、労働組合の同意を必要とする
(2)協議型…一時休業時には、事前に労働組合と協議する。
(3)通知型…一時休業時には、事前に労働組合に通知する
2 労使協定を結びます
会社側が希望退職の実施を決定した際、労働組合のある会社では、労使協定の締結を求められることが多いです。
労働基準法上、必ず締結しなければならない、ということはありませんが、労働組合の協力を得るためにも極力対応した方がよいでしょう。
労使協定に盛り込む一般的な事項としては、募集人数、対象者、募集期間、手続き、退職日、退職金の取扱いなどが考えられます。
● 労使協定のサンプル(PDFファイル)
そのほかのポイント!
1 希望退職を募る前に、できる限りの対応策をとってみましょう
希望退職は、社員の雇用・生活に重大な影響を与えます。希望退職を募る前に、できる限りの過剰雇用に対する対応策を取るようにしましょう。
2 辞めてほしくない社員がいる場合には、あらかじめ対応を考えておきましょう
a.希望退職実施の通知文書に「業務上特に必要と認めるものは除く」と明記する
b. 希望退職実施の通知文書に「退職金の優遇装置を講じるのは「会社が認めたもの」だけであり、「会社が特に必要と認めるもの」については希望退職を適用しないことを明記する
3 経営責任を明確にしましょう
社員に対して退職を求めるわけですから、その原因となる「業績悪化」「経営不振」を招いたのは経営陣に責任があったためである、ということを明確にしなければなりません。
役員の辞任や降格人事、役員数の削減、役員報酬の削減・返上などを行い、社員に明示することが大切です。
4 過度の退職勧奨にならないよう注意しましょう
希望退職に応じるかどうかについてはあくまでの個人の意思です。
無理な退職勧奨を行い、トラブルになることを避けるため、中間管理職へ周知するなどして注意しましょう。







